高杉晋作を訪ねる墓地の旅その2
なぜその2になったのかと言うと、山口県には高杉にまつわる名所、ワタシにとっての聖地がとにかくたくさんあるので、一日では回りきれなかったのだ。で……中2年あけて再び当地を訪れ待望のお墓参りとなりました。
高杉の墓所がある下関市吉田に向かう途中に、山口県が生んだもう一人の英雄・大村益次郎の墓所があるので、まずはそちらへ聖地巡礼。
長州の英雄「火吹き達磨」「鼻ぐりのない牛」
大村益次郎は村医者の長男として長州・大村に生まれた。医者時代には村田良庵、幕府講武所教授時代は村田蔵六と名乗った。蘭医学・兵学を修め、幕末維新での戦では常勝の軍参謀として武功をあげた偉人で、その功績から靖国神社に大きな銅像がたっている。
大きく張り出したおでこ、吊り上った太い眉毛、そして歯に衣着せぬ文言から高杉がつけたと言われる益次郎のあだ名は「火吹き達磨」である。このあだ名は肖像画を見ると吹き出すくらい的を射ている。さすがは高杉だなあと変に感心してしまう。ちなみに高杉のあだ名は「鼻ぐりのない牛」。暴れ牛という意味らしい。二人とも毒舌の人だったそうだ。
さて、益次郎の墓所は彼の生誕地である山口市鋳銭司(すぜんじ)にある。山口県史跡案内では「JR山陽本線・四辻駅から徒歩で20分」とあるので自動車で向かうことにした。益次郎の墓所は国指定の史跡となっているから、これは楽しみである。
果たして地図を見ながらたどり着いたその地は……寂しい、寂しすぎる。山中にある墓所は立派なものなのだが、ほとんど手入れはされておらず、花も線香もあげられた形跡はない。苔むした墓石は風化が進んでいて、乱暴に掃苔をしたら欠けてしまうのでないかと心配してしまうほど。
ん……待てよ、そうか、墓参者はワタシと同じように下手に手を入れて墓石を痛めてはいけないと掃苔をしていないのかも。そうだ、きっとみんなそう思って手を合わせるに留めているのだろう。そう思わなければ偉人・益次郎に申し訳ない。
益次郎に想いを馳せて線香を焚き手を合わせる、合掌。
高杉晋作の墓地へ
墓所から南に1kmほど行った長沢池畔には、益次郎を祀神とした『大村神社』と『鋳銭司郷土館』がある。ここも人気(ひとけ)はない。ううう、益次郎さん人気無いなあ。神様になった益次郎に敬意を表し、神社でお賽銭を投げ入れ二拝二拍一拝しいよいよ高杉の墓参へ向かう。
高杉の墓所は下関市吉田の東行庵にある。
うおおおおお、なんじゃこりゃあ(下関が生んだ名優・松田優作風の驚き方法)観光客がいっぱいいる。ワタシらの一行以外は誰もいなかった益次郎の墓所とは雲泥の差である。
東行庵の駐車場横に並んだ食堂で「晋作うどん」というメニューがあるのを見つけて食べてみる。海老の天ぷら、山菜、白玉、椎茸、そして高杉が好きだった梅にちなみ梅干がのって550円。美味しかった。
敷地には、高杉晋作の百年祭を記念し昭和41年4月14日に開館した東行記念館がある(入館料300円)。館内には、晋作の遺品、師である吉田松蔭の獄中書簡、奇兵隊旗の史料が展示されている。高杉が詠んだ詩歌もずらりと並び読み応えがある。また、複製ではあるが、大パネルで血気盛んな高杉と意外なほど逞しく強そうな若き伊藤博文が一緒に写っている写真もある。
東行庵といういわば観光スポットは、元々奇兵隊軍監・山縣有朋が無隣庵(むりんあん)と呼んで使っていた草庵を、高杉の愛妾おうのに贈り、東行庵としたこの住居が由来である。高杉晋作の遺骸は遺言により奇兵隊の本拠地に近いこの地に葬られ、おうのは出家し、谷梅処尼の名で東行庵に住み生涯高杉の墓を守った。庵の中には入れないが、外観から往時が偲ばれる。
いよいよ墓参
さてさて、一通り敷地内を探索しいよいよ墓参である。山腹にあるお墓までの道には高杉晋作像(刀が長い)、顕彰碑、晋作作歌碑、そして奇兵隊及び諸隊士顕彰墓地、隊士慰霊菩薩石像などがあり、参拝者を飽きさせない……いや、むしろ、どれもこれも立派な造りで見入ってしまい、なかなか墓所まで着かないくらい。我ながらミーハーである。幕末ミーハー(笑)。
高杉晋作の墓は墓石いっぱいに大きく「東行墓」と刻まれ、裏面には「谷潜蔵 源 春風号東行、慶応三年丁卯四月十四日 病歿赤間関享年二十九」と刻まれていた。高杉の遺骸は土葬である。となると、いま踏みしめている土の下にはあの高杉晋作が横たわっていると思うと少し震えた。
司馬遼太郎は歴史紀行「街道を行く」の中で「長州は武士と庶民が一丸となって維新を成し遂げた」と記している。今では当たり前である身分の区別が無い日本の社会は、身分を問わず人材を募り高杉が作った奇兵隊によって始まった。その生涯は僅か27歳と8ヶ月。まさに走るように短いものであった。合掌。
ぶらり偉人墓地の旅 あとがき
二回にわたり山口県に足を伸ばし高杉晋作を訪ねる偉人墓地の旅。今回は墓マイルと共に飛行機マイルもずいぶん貯まりました(笑)。





